来年1月1日以降に発生する相続から、改正された相続税法が適用になります。
今まで相続税がかからなかった方も一定の方はかかるようになり、そもそも相続税がかかる方はこれまでよりも増税となります。まずはご自身の財産内容を把握し、相続税評価額を算出した上で税額シミュレーションをしておきましょう。それが相続対策の出発点になります。
そういった現状把握も無しに闇雲にアレコレと対策を講じてみても、効果は期待薄です。それどころか、かえって逆効果にもなりかねません。ご自身でシミュレーションまでやるのは難しいと思いますので、キチンと専門家に依頼しましょう。当社でも、提携の税理士とともに税額シミュレーションを行っていますので、よろしければご用命ください。
さて、税額シミュレーションした結果、相続税がかなりかかりそうだと分かれば、節税対策を講じていくことになります。相続税の節税対策の大原則は概ね以下の4つです。
①法定相続人を増やす
例えば子供を増やしたり、未婚の方は結婚したりすると、相続税は安くなります。ただし、それらはやろうと思って簡単にやれることではありません。最もよく利用されているのは、養子を作ること(養子縁組)です。実子がいる方は養子を1人作ると、相続税の確実な節税に繋がります。
②財産を減らす
自分が元気なうちに使うべきものには自分のお金をキチンと使い、現預金を減らすことです。自宅や収益物件をリフォームしたりするのもいいですし、自分の趣味などに大いにお金を使うのもいいでしょう。ただし、使うといってもそう簡単に自分だけで使いきれるものではありません。そこで検討したいのが、家族に対する贈与です。
子供や孫へ生活費や教育費を贈与する、マイホーム取得のための資金を贈与する、その他子や孫が必要とする時に贈与する。計画的に贈与を行えば、かなりの金額を贈与税非課税で贈与することが可能です。更に、子や孫から直接「ありがとう」の言葉を聞くこともできます。自宅の名義を配偶者へ替えることも贈与に当たりますが、これも大きな贈与税非課税枠がありますので上手に使えば節税に繋がります。
③財産の評価額を減らす
相続税の節税はしたいけど財産は減らしたくない・・・そんな方は、例えば手持ちの現預金を不動産に替えるだけで節税になります。相続税算出上、現預金よりも不動産の方が財産評価額を低くみてもらえるからです。手持ち資金が無い(又は使いたくない)場合は、ローンを組んで不動産を取得しても節税効果は同じです。
また、空地(未利用地)を他人に貸したり、そこに自分で賃貸物件を建てて入居者を入れると、土地の評価額が下がり節税になります。賃貸物件を建てるということは現預金を不動産に替えるということですから、二重の節税効果が得られます。そして、宅地は、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例が適用となり、評価額を最大で更に80%減額されますので、相続税は大幅減となり、あるいはまったくかからなくなる場合もあります。
小規模宅地等の特例の適用要件を生前のうちに確実に整えておくことが重要です。自宅を二世帯住宅へ建替える(親子同居する)、賃貸併用住宅へ建替える、単価の高い土地へ買い替えるなども、その一環です。
④生命保険契約をする
自分で自分に生命保険を掛けて家族を受取人に指定すれば、家族が受取った死亡保険金は500万円×法定相続人数分の金額まで相続税非課税となります。例えば、夫婦と子1人という3人家族で、父親が自分自身に生命保険を掛ける場合、死亡保険金額1,000万円(500万円×2人)までは相続税非課税なのです。
仮に掛金が1,000万円だったとしても、1,000万円という課税財産(現金)が1,000万円の非課税財産(生命保険)に変わるので、その分相続税の課税対象財産が減り、税金は安くなります。
以上、相続税の節税のための大原則を挙げましたが、特に②③については様々な使い方があり、工夫のしどころと言えます。ただし、相続問題は税金だけの問題ではありません。節税対策にあまりにも傾注してしまうと、将来的な遺産分けがやりづらくなる、借金を抱える、事業リスクを抱える、納税資金の捻出に苦しむ、家族の生活設計とかけ離れた財産構成になるなど、思わぬ弊害をもたらすことが多々あります。
節税も大事ですが、家族の幸せは更に大事。節税のみが家族の幸せではありません。そういった意味でバランス感覚を持った相続の専門家に依頼をし、「分割・納税・節税」といったトータル的な相続対策を実践していくことをお勧めします。