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分譲マンションの評価実例

2024.06.10

令和6年1月から相続や贈与における居住用分譲マンションの評価方法が変わりました。

これまで、分譲マンションの相続税評価は流通時価の3割~4割程になることが多く、これが令和6年以降は最低でも市場価格理論値の6割の評価になります。

これがいわゆる「タワマン節税封じ」です。

ところが、実際には評価額ゼロという事例も出てきています。

何故そのような評価になったのか解説します。

 

(1)不動産の概要

・築年数:昭和50年7月
・総階数:5階建
・所在階:2階
・専有面積:69.29㎡
・敷地権割合:12960分の72
・敷地面積:20638.60㎡

 

(2)評価方法について

評価乖離率は次の算式により求めた値になります。

 

◆評価乖離率=A+B+C+D+3.220

 

A=当該一棟の区分所有建物の築年数×△0.033
B=当該一棟の区分所有建物の総階数指数×0.239(小数点以下第4位を切り捨てる。)
C=当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階×0.018
D=当該一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度×△1.195(小数点以下第4位を切り上げる。)

 

※1 「築年数」は、当該一棟の区分所有建物の建築の時から課税時期までの期間とし、当該期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。

※2 「総階数指数」は、当該一棟の区分所有建物の総階数を33で除した値(小数点以下第4位を切り捨て、1を超える場合は1とする。)とする。この場合において、総階数には地階を含まない。

※3 当該一室の区分所有権等に係る専有部分が当該一棟の区分所有建物の複数階にまたがる場合には、階数が低い方の階を「当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階」とする。

※4 当該一室の区分所有権等に係る専有部分が地階である場合には、「当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階」は、零階とし、Cの値は零とする。

※5 「当該一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度」は、当該一室の区分所有権等に係る敷地利用権の面積を当該一室の区分所有権等に係る専有部分の面積で除した値(小数点第4位を切り上げる。)とする。

 

◆評価水準

1を評価乖離率で除した値とする。

 

(3)実際の計算例

A)48年×△0.033=△1.584
B)5階÷33×0.239=0.036
C)2階×0.018=0.036
D)敷地利用権72㎡÷12960㎡×マンション全体の敷地面積20638.6㎡÷専有面積69.29㎡×△1.195=△1.978

 

◆評価乖離率

△1.584+0.036+0.036+△1.978+3.220=△0.27

 

◆評価水準

1÷△0.27=△3.704

 

◆土地及び家屋の相続税評価額の算定

自用地としての価額、もしくは自用家屋としての価額に以下の区分所有補正率を乗じて求めます。

 

(1)評価水準が1を超える場合
 区分所有補正率=評価乖離率

(2)評価水準が0.6未満の場合
 区分所有補正率=評価乖離率×0.6
 

国税庁の評価通達の中に、

「ただし、評価乖離率が零又は負数のものについては、評価しない。」とあります。

従って、今回は評価乖離率が負数(△0.27)になる為、評価はゼロとなります。

もともと、タワマン節税を封じる狙いは

・築年数が新しい
・総階数が高い
・所在階数が高い
・敷地権割合が小さい

ものについて、評価額を上げることです。つまり、今回の事例はこの対極にあった為、評価がゼロという結果になりました。

 

(4)結果を受けて

相続税評価がゼロとは言え、国税庁の伝家の宝刀、評価通達6項を適用される可能性は否定できません。

将来、万が一評価額が見直しになることに備え、今回は相続時精算課税贈与の選択を検討しています。理由は、対象不動産の相続税評価額は2500万円以下である点と、仮に時価評価での贈与と認定された場合でも基礎控除内に収まり贈与税が発生することが回避できる為です。それぞれのご家族にとって暦年贈与が良いのか、相続時税精算課税贈与が良いのかは十分に検討する必要があります。

 

(5)おわりに

相続税がかかるご家族にとっては、賃貸用の分譲マンションを贈与することで、親世代の資産の増加を防ぎつつ、次世代の相続税納税原資を貯めるといった効果が期待できます。

また、将来の建て替えによる不動産価格の上昇を見越して贈与を実行するケースもあります。相続発生時に持ち戻しとなった場合でも、贈与実行時の価格となる為、将来値上がりした状態で相続するよりも評価を抑えることができます。

今回のように、総階数や所在階が低く、土地が広く、築年数が古い物件に関しては同様の結果が出る可能性があります。

一般的には、評価額は上がるケースが多いと思いますが、生前贈与を検討することでご家族の相続対策が進むきっかけになることも期待できます。

今後、国税庁が評価方法の見直しや評価通達6項の適用を実施するかは不明です。

今回のケースは稀かもしれませんが、分譲マンションの生前贈与を検討されている方は、必ず税理士等の専門家と十分に協議の上進めるようにされてください。

弊社は、相続の分野に特化した税理士、司法書士等と連携しサポートすることが可能です。お気軽にご相談ください。

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筆者紹介

田ノ上 彰
福岡相続サポートセンター
上級相続支援コンサルタント

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